Additive manufacturing

積層造形部品の金属組織試料作製

積層造形は最近の生産技術として、微細構造検査専門家に新たな課題を提示しています。このホワイトペーパーは、デンマーク技術研究所(DTI)と協力して作成され、微細構造分析用に積層造形部品の試料を迅速かつ正確に作製するための実証された方法を詳しく説明しています。

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積層造形法とは?

3D プリントとも呼ばれる積層造形法は、一度に 1 つの超微細層を重ねて 3D オブジェクトを製造する技術を指します。各連続層は、以前に溶融した、または部分的に溶融した材料の層に結合して、構成要素、部品、または完成品を作り出します。

積層造形の利点
積層造形は、複雑な構成要素の設計と作成を単一のオブジェクトとして簡素化し、モデルやプロトタイプを構築する際の時間とコストを削減します。下記のような多くの理由のために、特に複雑な部品の連続生産方法として急成長しています。
  • 設計の改善:複数の部品を設計段階で 1 つのオブジェクトに統合できるため、強度、軽量化、耐久性が向上します。
  • コスト削減:材料の無駄、工具コスト、人件費の削減は、積層造形製造コストの削減につながります。
  • リードタイムの短縮 製造された部品は、機械からの取り外し後、直接使用できるか、後処理が制限されます。
積層造形材料の特性
当初、積層造形に利用可能な金属は、開発、自動車、航空宇宙、医療業界を推進する産業に関連していました。しかしながら、複数の新しい合金、再設計された合金が市場に参入し続けています。一般的に、積層造形部品は、従来の製造部品と同等またはそれよりも優れた機械的特性と密度を有しています。下記は、3 つの主なグループに分類される積層造形に関する最も一般的な欠陥と逸脱です。
  • 表面品質:後処理のない積層造形部品は、表面が粗くなりがちです。
  • 形状と寸法の偏差:周期的加熱による熱収縮は、寸法偏差を引き起こす可能性があります。
  • 微細構造の欠陥:通常、ガスまたは融解不足によって引き起こされる気孔が問題になる可能性があります。

製造用ツールとサポート


図1: 製造用ツールとサポート

積層造形部品の製造

ISO/ASTM 52900:2017 で定義されている積層造形プロセスは、主に 7 種類あります。このアプリケーションノートでは、1 つの特定技術を使用して製造された部品に焦点を絞っています。レーザー粉末床溶融結合法(L-PBF(レーザーパウダーベッド方式))。

L-PBF 工程
球状粒子(直径 15~60 μm)の微細金属粉末がベースプラットフォーム全体に均等に敷き詰められます。レーザーは粉末を横切ってスキャンし、下層まで加熱し溶接します。この手順は、最終コンポーネントが完成するまで繰り返されます。

応力開放
ビルド工程の完了後、部品の残留応力は、しばしばガス保護環境で数時間かけて開放します。これを行わない場合、一部の材料や形状では、ビルドプレートから切断する際、亀裂や変形が起こります。

熱処理
完成部品は非常に微細な構造を持ち、急速に冷却されると通常、高強度と低延性につながります。熱処理は、特定の機械的特性を調整したり、耐腐食性を高めるために使用できます。

製造工程には、材料の品質と特性に影響を与えるいくつかのパラメータがあります。

詳細については、アプリケーションノートをご覧ください。

学生プロジェクト用のロケットノズル


図4:学生プロジェクト用のロケットノズル

積層造形部品の微細構造検査

積層造形部品は、幅広い用途に使用することができます。これには、自動車のトーションスプリングやブレーキキャリパー、ジェットエンジンの燃料ノズルやタービンブレード、医療用インプラントなどの重要な用途が含まれます。

このため、品質管理では、積層造形部品の金属組織学的検査が頻繁に行われます。一般的に、これは原料粉末または試験 / ターゲット試料で実行されます。
  • 原料粉末:粒度分布、形状、構造について粉末を調査します。
  • 代表的な試料:これらは、積層造形部品とともに印刷された小さな棒または立方体で、部品を破損することなく材料の微細構造分析を可能にします。
積層造形では多くの異なる金属や合金が使用されているため、金属組織学的試料作製に単一の方法はありません。一般的に、試料作製は、同じ材料で製造された他の部品またはコンポーネントに使用される標準的な試料作製方法と同一または同様である必要があります。

積層造形部品の微細構造の詳細な説明については、アプリケーションノート全文をダウンロードしてください。

積層造形部品の切断と埋込み

原料粉末の埋込みに関する推奨事項
  • 粒度分布を調べるには、硬化した埋込みを縦方向に切断し、90° の角度で再埋込みすることをお勧めします。
  • 粉末の熱間埋込みは可能ですが、追加のエッチングが粉末と樹脂を区別するのに役立つ場合を除き、金属フィラーのない樹脂が必要です。
  • エポキシの冷間埋込みが推奨されます。小型または軽量の粉末で作業する場合は、樹脂を加熱して粉末を沈みやすくすることが役立ちます。
試験/ターゲット試料の切断と埋込みに関する推奨事項
  • 切断時には、分析の目的に応じて、ビルドアップ / レイヤー方向を考慮する必要があります。
  • 積層造形試験試料は通常小さいため、信頼性の高いクランピング工具を備えた高精度な切断リューションが好まれます。
  • 試料が非常に小さい場合、または形状が複雑な場合は、試料の損傷を防ぐために切断前に透明なエポキシ(EpoFix または CaldoFix-2)で埋込むことができます。
  • 熱間埋込みと冷間埋込みの両方が可能です。試料が脆く非常に小さい、または複雑な形状の場合は、冷間埋込が推奨されます。
積層造形試料の切断と埋込み方法に関する詳細の説明は、こちらのアプリケーションノートでご覧いただけます。


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攪拌された金属鋼粉末

図9 FixiFormと CaldoFix-2 (左)で 撹拌した金属鋼粉末。変性クレムエッチング液(右)で研磨およびエッチング。明視野。

埋込みの断面図

図10 EpoFix 内の AlSiMg10 粉末埋込み部分の断面、再埋込み済み。琢磨された試料は、微視的分布、粉末材料のサイズおよび形状を示す(下)。

金属粉末のタブレット

図11 金属粉末を濃縮した PolyFast のタブレット、CitoPress でプレスし、 MultiFast ダミー試料上に 一時的に接着(左)。SEMでのその後の検査のために、金属サポートブロック(中央)に接着されたタブレット。PolyFast 内の鋼粉粒子の顕微鏡画像(右)。明視野。

縦方向

図13 Fuss エッチング液でエッチングされた AlSi10Mg 合金の縦断面(左)および横断面(右)。明視野。

積層造形部品の研磨、琢磨、エッチング

積層造形材料での試料作製の場合、研磨、琢磨、エッチングの試料作製段階は、材料 / 合金によって大きく異なります。AM で一般的に使用される 4 種類の材料に関する簡単な推奨事項を以下に示します。

チタン
一般的に、試料作製は他のチタン試料に使用される標準的な方法に従う必要があります。
  • チタンは延性が高いため、機械的な変形や引っかき傷が付きやすくなります。このため、特に純チタンにはダイヤモンド琢磨を避ける必要があります。
  • チタン合金が少ない場合は、電解研磨を推奨します。
  • より多くの情報を明らかにするために、機械的または電解的試料作製後にエッチングが必要になることがよくあります。チタンは耐薬品性があるため、フッ化水素酸を含むエッチング液が推奨されます。
  • 偏光はチタンの優れた光学エッチング方法です。

表

表2 埋込みなし、30mmのチタン試料の研磨・琢磨試料作製条件。

チタン積層造形で製造された試料の琢磨、電解研磨、エッチングに関する詳細な説明と実証済みの方法については、アプリケーションノートをご覧ください。

最終研磨後のチタン

図14 最終研磨された気孔を含む チタン試料。MD-Chem上でOP-Sノンドライ懸濁液を使用して琢磨、偏光コントラストで見える微細構造。

チタン合金

図15 チタン合金。A3 で電解研磨、埋込みなし。明視野。

チタン合金

図16 チタン合金。Fuss エッチング液で電解研磨され、化学的にエッチングされた。明視野。

チタン合金

図17 Keller エッチング液でエッチング後の チタン合金 。偏光。

アルミニウム
アルミニウムは軟質ですが、合金要素はその機械的特性を大幅に変化させる可能性があります。一般的に、積層造形試料の作製は、同様のアルミニウム試料の作製方法に従う必要があります。
  • 変形、傷、縁ダレを防ぐために、アルミニウム合金用に特別に開発された MD-Molto と呼ばれる剛性の面出し研磨面を使用することをお勧めします。
  • 精研磨の場合、ダイヤモンド懸濁液付きの MD-Largo(例:DiaPro Allegro/Largo)は多種類のアルミニウムに適しています。
  • 徹底的な琢磨を確保するには、ダイヤモンド琢磨(MD-Mol)と酸化物琢磨(コロイドシリカ、OP-U)で精研磨を行います。
  • 特定の詳細を明らかにするためには、化学、電解、光学のエッチング条件、またはこれらの組み合わせを使用できます。

表

表3 埋込みなし、30 mmのアルミニウム試料の研磨・琢磨条件

詳細な情報と方法については、アプリケーションノートをご覧ください。

さまざまなアルミニウム合金

図18 Barker 試薬エッチング後の異なる アルミニウム合金 、明視野(左)と微分干渉コントラスト、 DIC(右)

精密琢磨済みの作業面

図19 アルミニウム合金の精研磨された表面。MD-Chem および OP-S で琢磨。微分干渉コントラスト、DIC、エッチングなし。

アルミニウム合金の概要

図21 Barker 試薬でエッチングされたアルミニウム合金の概要(左)。析出を伴うアルミニウム合金の詳細。高倍率(右)。明視野。

Barkers 試薬後のアルミニウム合金

図22 Barker 試薬エッチング後のアルミニウム合金 (左)。アドラーエッチング液でエッチングされたインコネル(下)。偏光。

ステンレス鋼とニッケル系合金
これらの材料は柔らかく延性が高いことが多いため、非常に粗い研磨面と高圧は避ける必要があります。一般的に、試料作製は、他のステンレス鋼およびニッケル系合金で使用される標準的な方法に従う必要があります。
  • MD-Alto などの専用の面出し研磨円板を使用します。
  • 精研磨は、ダイヤモンド懸濁液を硬質の円板(MD-Largo)または MD-Plan クロス上で行う必要があります。
  • 中程度 / 硬い布(MD-Dac)で徹底的にダイヤモンド研磨し、精研磨を行います。
  • 微細な傷を取り除くには、コロイドシリカ(OP-S)またはアルミナ(OP-A)による最終琢磨を推奨します。
  • 10% のシュウ酸水溶液を使用する電解エッチングが一般的です。二相鋼の場合、水酸化ナトリウム(20%水溶液)による電解エッチングで良好な結果が得られます。

表

表4 埋込みなし、30 mm のステンレス鋼試料の研磨・琢磨条件

多孔性評価のための試料作製方法を含む詳細な情報と方法については、アプリケーションノートをご覧ください。

琢磨後のオーステナイト鋼

図24 MD-クロス Chem 上で OP-S懸濁液で琢磨した後のオーステナイト鋼。化学エッチングなしで構造が見える。微分干渉コントラスト、DIC。

インコネル 718

図25 Adler エッチング液でエッチングされたインコネル 718。明視野。

二相鋼 14462

図26 シュウ酸による電解エッチング後の二相鋼 1.4462(10%)。明視野(左) 水酸化ナトリウム(20 %水溶液)による電解エッチング後、微小硬さ圧痕を含む二相鋼 1.4410。微分干渉コントラスト、DIC(右)。

工具鋼
工具鋼は、クロム、ニッケル、バナジウム、モリブデンなどの合金元素を多く使用して作られています。研磨および琢磨で最も難しい課題は、炭化物と非金属介在物を保持することです。一般的に、試料作製は他の工具鋼で使用される標準的な方法に従う必要があります。
  • 面出しには、ダイヤモンドを埋め込んだ面出し研磨円板(MD-Piano)を使用することを推奨します。
  • 精研磨には、ダイヤモンド懸濁液付きのメタルボンドダイヤモンド円板(MD-Allegro)を使用します。
  • 高合金鋼の場合、クレムエッチング液を使用できます。

表

表5 埋込みなし、30 mmの工具鋼試料の研磨・琢磨条件

詳しい情報と方法については、アプリケーションノートをご覧ください。

工具鋼 12709

図27 変性クレムエッチング液 (10/3)でエッチングし、塩化水素を添加した工具鋼 1.2709。

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ターゲット試料作製

積層造形試料では、特に微細構造の微視的属性を調査することが重要です。これらのターゲットには、レーザー焼結工程からの孔、亀裂、介在物、および粉末など異なる原料からの不純物などがあります。

表面に開いた多孔性と亀裂を視覚化する場合、蛍光粉末を使用したエポキシ樹脂が有用なソリューションです。以下をお勧めします。
  • エポキシ樹脂を 50~60°C に加熱して粘度を上げます。
  • 硬化中に能動冷却を使用して含浸を改善し、収縮と間隙の形成を低減します。

このテクニックに蛍光染料を使用する場合は、顕微鏡に特別な機能が必要です。

詳細については、アプリケーションノートをご覧ください。

アルミニウムの亀裂の充填

図28 アルミニウム合金の亀裂を蛍光樹脂で充填(左)。オーステナイト鋼の開放気孔(右)。

AlSi の汚染

図29 CuCrZr1 試料内のAlSi 粉末粒子の汚染。明視野。

光学顕微鏡

図32 チタン合金の大型の孔の光学顕微鏡画像。試料は、100 ml の水、10 g の水酸化ナトリウム、10 ml の過酸化水素 H2O2 のエッチング液でエッチングされた。

積層造形部品の微細構造検査

積層造形は、最も新しく、急速に成長しつつある部品製造技術の 1 つです。主にプロトタイプやユニークな設計の作成に使用されていますが、複雑な形状の高強度で軽量な単一コンポーネント部品の製造のために、一般的な製造でも使用が増加しています。

比較的「若い」生産技術である積層造形は、微細構造検査専門家に新たな課題を提示しています。一般的に、微細構造検査は、品質管理の一環として原料粉末または代表的な試験試料で実施されます。これらの試料は非常に小さいことが多いため、高精度の切断とクランピング装置が推奨されます。

積層造形では、さまざまな金属や合金を使用することができます。一般的なルールとして、試料作製はその材料の標準的な試料作製方法と同様である必要があります。ただし、特定の試料によって方法が異なる場合があります。

アプリケーションノートでは、微細構造分析用の積層造形部品の試料作製方法について詳しく説明しています。アプリケーションノートには、一般的な課題とソリューションの包括的な説明に加えて、さまざまな積層造形材料と合金の実証済みのメソッドと技術が含まれています。

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ホルガー・シュナール

画像提供:デンマークのアプリケーションスペシャリスト、オラファー・オラフソン。

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